空き家所有者・管理者の方へ
北海道の小規模自治体で開催した空き家相談会において、よく相談を受ける内容をQ&A方式でまとめました。まとめたものを空き家WEB相談室として無料開放しますので、ご自由に入室のうえ、お知りになりたい事項についてご確認ください。皆様が所有する空き家についての疑問や心配事の解消に繋がるようでしたら幸いです。
相談の前に
あなたと空き家の関係、空き家に住む予定の有無、相続登記について整理しましょう
- 1 誰の空き家ですか?
- あなたが空き家を管理し、固定資産税を納税していても、あなたが登記名義人(所有者)とは限りません。あなた名義の「登記済証」(いわゆる「登記済権利証」、「権利証」)、「登記識別情報通知」をお持ちでしたらあなたが所有者ということで原則として間違いありませんが、ご自身が登記名義人かどうか不明な場合、最寄りの法務局・地方法務局で空き家及び空き家が所在する土地の「登記簿」を請求・取得してみましょう。
- 2 将来、その空き家に住む予定がありますか?
- 両親や祖父母から相続した空き家を他人に売却したり、解体したりすることに抵抗があるかも知れませんが、ご自身やご家族で住む予定がないのでしたら、売却や解体をお考えください。
人が住まなくなった家は、急速に劣化します。また、事故の原因となることもあり、隣家や通行人への被害が発生した事例もあります。「住んでいないので知らなかった」では済まされませんので、住む予定がなければ売却や解体をお考えください。
(出典:(公財)日本住宅総合センター「空き家発生による外部不経済の実態と損害額の試算に係る調査」)
- 3 空き家の相続登記はお済みですか?
- 空き家の登記名義人があなたの両親や祖父母のままとなっている場合、あなたが管理し、固定資産税を納税していてもあなたの判断・手続きで売却することはできません。登記簿上の名義人にさかのぼり、適正に相続登記を完了させる必要があります。
ただし、あなたの一存であなたが新たな登記名義人となることはできません。法定相続人全員による遺産分割協議が必要です。
また、あなたの名義であっても、あなたが認知症を発症するなど、正常に判断することが困難となった場合、手続きを進められなく恐れがあります。
令和6年4月1日、
「相続登記義務化」がスタート
令和6年4月1日以前に発生した相続についても、
義務化の対象です。
■よくあるご相談 目次
Ⅰ.空き家の不動産登記に関する
よくある相談
- QⅠ-1 不動産登記とは何ですか?
-
AⅠ-1土地や建物が誰のものなのかを明確にするために、土地や建物の情報を法務局が管理する仕組みです。土地や建物の情報は、「登記簿」に記録されており、手数料を払えば誰でも閲覧や登記事項証明書(登記簿謄本)の請求・取得が可能です
- QⅠ-2 登記簿はどこで請求・取得できますか?
-
AⅠ-2「登記簿」は電子化されているので、全国どこの法務局・地方法務局でも請求・取得が可能です。また、自宅のパソコン等から登記事項証明書を請求できるオンライン請求、登記情報を確認できる登記情報提供サービスの利用も可能です。
-
- QⅠ-3
- 私が登記名義人であれば、いつでも売買できるの
ですか? -
-
AⅠ-3あなたが登記名義人であっても、認知症や重篤な病気等により正常な判断が困難な状況となった場合、売買等の手続きができなくなる恐れがあります。医療や介護の充実により平均寿命が伸びていますが、いつまでも正常な判断ができるとは限りません。あなたの年齢と健康状態を考えて、事前の対策をご検討ください。
- QⅠ-4 認知症などに備えるには、どのような
方法がありますか?
-
- QⅠ-5
- 空き家の登記済証(登記識別情報通知)が見当たりません。どうすれば良いですか?
-
-
AⅠ-5土地の登記済証はあるのに、空き家の登記済証が見当たらない場合がよくあります。この場合、空き家は「未登記建物」である可能性が高いです。まずは、登記簿の請求を試みてください。登記簿が無ければ未登記建物と考えられます。また、空き家が所在する自治体の固定資産税窓口でも、相談に応じて貰える場合があります。
Ⅱ.空き家の売却・賃貸化に関する
よくある相談
-
- QⅡ-1
- 空き家となった実家を売却したいのですが、宅建業者が所在しません。誰に相談したら良いですか?
-
-
AⅡ-1北海道内の小規模自治体の多くでは、宅建業者(不動産業者)が不在の状況です。小規模自治体では、空き家の情報を公開する「空き家バンク」等の制度を運用していますので、空き家が所在する自治体に相談することをお勧めします。
-
- QⅡ-2
- 宅建業者に依頼せず、個人間で売買契約をすることはできますか?
-
-
AⅡ-2法律的には、売主と買主が直接交渉して合意すれば、売買契約は成立します。しかし、隣地境界に係る確認事項や空き家の状態に関する告知など、契約後のトラブル発生が起きないよう、注意が必要です。
-
- QⅡ-3
- 宅建業者に依頼せず、個人間で賃貸借契約をすることはできますか?
-
-
AⅡ-3法律的には、貸主と借主が直接交渉して合意すれば、賃貸借契約は成立します。しかし、個人間取引であっても契約が成立すれば貸主は「大家さん」となりますので、貸家の不具合や劣化に対して修繕対応義務が生じるほか、引き続き固定資産税等の支払義務も負うこととなります。賃料収入は魅力かも知れませんが、貸家を維持するための支出についても良く考えてください。
- QⅡ-4 空き家や空き地を自治体に寄附することは
できますか? -
AⅡ-4北海道内の多くの自治体では空き家の寄附を受付していません。空き地についても原則として、公共事業上の必要性がある土地以外は寄附の受付をしていませんが、相談には乗って貰える場合があります。なお、対価を求めずに処分することをお考えであれば、隣地の方に「貰って頂く」ことを相談してみるのもひとつの方法です。
なお、農地については農業委員会が、山林については森林組合が、それぞれ相談に乗って貰える場合があります。
- QⅡ-5 「相続土地国庫帰属制度」って何ですか?
-
AⅡ-5令和5年4月よりスタートする制度です。国庫帰属可能な土地の条件や負担金が定められており、どんな土地でも無条件で手放せるわけではありません。また、空き家は対象外となっており、空き家が所在する土地については少なくとも当該空き家を解体撤去する必要があります。詳しい情報や制度利用については、法務省のホームページを参照いただくか、お近くの法務局や司法書士会などにご相談されることをお勧めします。
Ⅲ.空き家の解体に関する
よくある相談
-
- QⅢ-1
- 空き家を解体したら固定資産税が6倍になるの
ですか? -
-
AⅢ-1少なくとも、空き家を解体することによって固定資産税が6倍になることはありませんので、安心してください。空き家を解体した場合の固定資産税は、空き家や空き家が所在する土地の条件(用途や価値など)によっては安くなる場合もあります。自治体の税務窓口では固定資産税の試算に応じてくれますので、解体をご検討中の方は自治体に相談されることを勧めします。
-
- QⅢ-2
- 空き家を解体した後の固定資産税額を
試算できますか? -
-
AⅢ-2固定資産税の課税主体である自治体の税務窓口で試算して貰うのが原則です。しかし、固定資産税の課税ルールは公開されているため、ルールを理解すれば解体後の固定資産税額が増加するのか、減少するのか、ある程度は把握することが可能です。固定資産税の増減をある程度把握することができるツールを提供していますので、利用条件に同意される方はご利用ください。 ⇒⇒⇒「空き家解体後及び管理不全空家勧告後の固定資産税増減推定システム」
- QⅢ-3 空き家の解体費はどれくらいですか?
-
AⅢ-3解体廃棄物の処分費や重機の燃料費が高騰しているほか、令和4年4月からは、戸建住宅の解体工事についてもアスベスト建材の調査・飛散防止対策が求められており、コストアップとなっています。空き家の立地や業者の所在地、最終処分地までの距離などで料金が変わりますので、いくつかの解体業者に見積依頼し、比較検討されることをお勧めします。
- QⅢ-4 空き家の解体補助金はありますか?
-
AⅢ-4空き家の解体補助金の有無や適用条件は自治体毎に異なります。空き家が所在する自治体の空き家担当窓口に相談されることをお勧めします。
-
- QⅢ-5
- 空き家を解体するので不用家財も一緒に処分して
貰えますか? -
-
AⅢ-5空き家の解体廃棄物は産業廃棄物となりますが、不用家財は一般廃棄物ですので、一緒に処分することはできません。両方の収集運搬許可を持つ業者であれば一括引き受けは可能ですが、それぞれの処分費が発生します。不用家財の処分については、一般廃棄物収集運搬許可事業者や、自治体の住民生活・環境衛生窓口で相談されることをお勧めします。
Ⅳ.空き家の適正管理に関する
よくある相談
-
- QⅣ-1
- 空き家の所在地が遠く、管理が難しいです。
良い方法はありますか? -
-
AⅣ-1空き家の所有者にとって物理的、体力的、金銭的な状況は様々ですが、所有者である以上は、空き家の管理責任を負わなくてはなりません。責任を果たせない場合は、売却や解体をお考えください。なお、自治体によっては、所有者に代わって草刈りや枝払いなどを有償で代行してくれる事業者等が所在する場合があります。シルバー人材センターや建設業協会、商工会などにご相談されることをお勧めします。
- QⅣ-2 空き家だけ管理すれば問題ありませんか?
-
AⅣ-2空き家を管理するということは、空き家(家屋)だけでなくその土地を含めて管理する必要があります。隣地や公道などに越境している樹木等があれば、所有者の責任で管理しなければなりません。また、家屋の内部だけでなく、外装についても適正に管理することが求められます。劣化した住宅部材の飛散や落下による道路通行人への被害や、老朽空き家の倒壊による隣家への被害、屋根雪が隣家・道路に落雪することによる隣家や道路通行人への被害、放火や失火による隣家への延焼被害、などが発生することがあります。被害や損害が発生してからでは手遅れです。「住んでいないので知らなかった」では済まされませんので、管理が難しければ、売却や解体をご検討ください。 (出典:(公財)日本住宅総合センター「空き家発生による外部不経済の実態と損害額の試算に係る調査」)
-
- QⅣ-3
- 相続放棄すれば空き家の管理義務を負わなくても
良いのですか? -
-
AⅣ-3令和5年4月に改正民法が施行され、民法940条の相続放棄規定が改正されます。この改正により、相続放棄をした人は、その放棄の時に相続財産である空き家を占有している場合には、次の相続人に引き渡すまでの間は保存義務(管理義務)を負うこととなります。相続放棄は相続人個人の権利ですが、被相続人(亡くなった方)やあなた、お子様がその土地で生活した事実は消し去ることができません。被相続人やあなた、お子様がその土地を去っても、その土地で暮らす方々の記憶は残り続けますので、相続放棄の判断については熟考されることをお勧めします。
- QⅣ-4 空き家だけ相続放棄することはできますか?
-
AⅣ-4相続放棄は相続人個人の権利であって自らの意思で行使可能ですが、不要な資産を選んで放棄することはできません。プラスの資産(財産)もマイナスの資産(負債)もすべて放棄することとなります。また、相続放棄を申立てする以前に、一部であっても相続財産を使用・処分した場合は、原則として相続の意思があったものとされ、相続放棄の申立てが認められなくなる可能性があります。なお、相続放棄の申立ては、相続を知ったときから3ヶ月以内に行い、その申立てが受理されることではじめて相続放棄が法的に認められます。
-
- QⅣ-5
- 「管理不全空家」に指定されると固定資産税が高くなると聞きましたが?
-
-
AⅣ-5令和5年12月に施行された改正空家特措法において、新たに「管理不全空家」が規程されました。改正法では、そのまま放置されると「特定空家」となるおそれがある空き家を「管理不全空家」と位置付け、空き家が所在する自治体から「特定空家」となることを防止するために必要な措置を講じるよう指導されます。
この指導によって状態が改善しない場合は、「特定空家」となることを防止するために必要な具体的な措置について勧告されます。
この勧告を受けた場合、当該空き家が所在する宅地は、固定資産税における住宅用地特例の適用対象から除外され、税額が高くなってしまいます。
Ⅴ.空き家の予防に関する
よくある相談
-
- QⅤ-1
- 私たち夫婦は元気でいるうちは自宅で過ごしたいと考えていますが、子どもは既に独立して新居を構えたので自宅に戻ることはありません。
将来、空き家にしないためには、どうしたら良いですか? -
-
AⅤ-1慣れ親しんだ自宅、地元での生活は、都会の便利さには代え難い価値があります。
健康寿命も延び、地元で第二の人生を歩む方も少なくありません。一方で、年を重ねるほど、体力の衰え、筋力の低下、疾病の罹患等、だんだんと自宅での自立した生活が難しくなります。それに加え、認知症を患った場合、自らが土地、建物の所有者であっても、不動産の売買契約等ができなくなる(行為能力の喪失)恐れがあり、何らかの対策が必要と考えられます。
最も効果的な対策として、子どもの理解を得て、子どもに対して土地、建物の所有権を生前贈与することが考えられます。ご自身に比べて健康不安の少ない子どもに所有権が移ることで、万が一、健康上の危機が生じたとしても、権利行使に空白が生じにくいというメリットがあります。しかし、贈与税の発生や、固定資産税の負担、空き家となった際の処分等に要する費用負担等について、誰がどのように負担するか、家族間で充分に話し合うことが必要です。
-
- QⅤ-2
- 私には子どもが居らず、また、夫は他界しました。
私の兄妹は皆高齢で、私の死後、自宅の処分で迷惑を掛けたくないと考えています。どのような方法がありますか? -
-
AⅤ-2ご相談内容から察するに、ご両親も既に他界されているものと思慮します。この場合、あなたがなくなった場合の法定相続人は、ご兄妹となります。そのご兄妹に、ご自宅(財産)の処分で迷惑を掛けたくない、と言うことでしたら、遺言により「遺言執行者」を指定する必要があります。「遺言執行者」には法定相続人に限らず、司法書士や弁護士等の専門家を指定することもできます。また、ご自宅(財産)の処分だけではなく、年金や介護保険等の行政手続きや電気やガス・電話等民間サービスに関する解約手続きなども多数あることから、「死後事務委任契約」の締結についてもご検討ください。